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おそらく、こんな“楽器屋”的な紹介は演奏家にとっては本意ではないと思います。
もちろん、島根恵がこのCDで世に問いたかったものは新作ヴァイオリンの実力などではなく、自分のバッハの演奏であり、その解釈であったはずです。バッハ自筆の譜面やバロック奏法を研究した上で、敢えてモダン楽器で演奏されたこのCDは、確かに、時にエキセントリックに傾く刺激的な古楽器演奏のスタイルでもなければ、モダン楽器をたっぷり鳴らしたロマンティックな大時代的な演奏でもない、まさに彼女独自の世界を作り上げていると思います。
でも、ここでは“楽器”にスポットを当てて話をさせていただきましょう。
演奏の世界では、コンクールの時だけ、あるいはレコーディングの時だけ自分の楽器ではなく、いわゆる名器(銘器)、例えばStrad、del
Gesu などを使うなどということも珍しくありません。もちろんそれによって大きな効果を得ることができることも事実でしょう。しかしそれらは所詮は“借り物”に過ぎません。
雑誌(月刊ストリング 2000年12月)のインタビューで、アン・アキコ・マイヤーズは最近デル・ジェスからヴィヨームに換えたという話をしています。その理由というのが
「いくら銘器であっても、借りたものというのはいつ返却を余儀なくされるかわからないものだから。」 だそうです。「自分が買うことのできるヴァイオリンを弾くというのは大切なことだとつくづく思います。」
とも彼女は言っています。島根恵がIveでレコーディングに臨んだのも、借り物でない自分の音楽を、これまた借り物ではない自分のヴァイオリンで試してみたかったからなのかもしれません。
ところで、私は選定した新作楽器を演奏家の方に試していただくことがよくあります。
その時にお答えいただく言葉で一番多いのが
「これだったらすぐに演奏会に使えますね。」
「弾きこんでいない全くの新品でも良い音がするものですね。」
といったものです。
もちろん、お褒めの言葉をいただいくこと自体は大変嬉しいことなのですが、反面、「新作楽器はすぐには使えるものではまずない」「新作はセカンド楽器としてならまだしも、メインの楽器には成り得ない」・・・・・という考え方がまだまだ根強いものであることを思い知らされることになります。
良い新作楽器は初めから良い音がする。良い音がしないのは“新作”であるせいではなく、その楽器の作り方に問題があるという楽器製作の“常識”はまだ通用しないのです。
ですからこのCDによって新作楽器の素晴らしさ(と言うよりもその“普通”さでしょうか?)を多くの人に知っていただけるのは大変に嬉しいことです。
ただ、こういったご紹介をいたしますと「Iveってのが良いのだな。それじゃIveを探そう。それはどこにありますか?」「いったい新作ヴァイオリンはどれ(誰の、どこの国の)が良いのでしょう。」というお問い合わせが増えると思います。お気持ちは良く解ります。でもそれでは上手くいかない場合も多いのです。
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