Andrea Cabrini
1973年クレモナ生まれ。
1991年クレモナのヴァイオリン製作学校卒業。
Giorgio Scolari に師事。Bissolotti や Balzarini 工房で働き独立。
1997年および2000年のクレモナ・トリエンナーレ
国際ヴァイオリン製作コンクールで入賞。
イタリア新作ヴァイオリンのご紹介です。
CabriniはFrancesco Bissolotti の弟子。現在は同じCremonaに工房を構えています。
Francesco Bissolotti の弟子だったということは、Francesco Bissolottiのヴァイオリンの中には、この人の手が入ったものもあったに違いないということです。
Francesco Bissolotti は息子が4人いますし、弟子も何人もいます。
最近は息子のラベルのヴァイオリンも見るようになりましたが、それまでは息子が手がけたものがあったはずです。
同じことはAntonio Stradivari にも言えます。言わばこのような生産体制はCremonaの伝統なのです。
彼も2人の息子、そして沢山の優秀な弟子と共に仕事をしていました。
その中には Carlo Bergonzi などの突出した実力を持つ名工もいたのです。
Stradivari は生涯に1,000本以上のヴァイオリンを作ったと言われています。
確かに93歳まで楽器を作り続けることができたから、多くの作品を残せたと言えなくもありませんが、一般的には、加齢とともに視力も落ちますから、自分ひとりで93歳まで作り続け、高水準の楽器を沢山残すというのは、ちょっと無理があります。
一方、 2人の息子のラベルが貼られたヴァイオリンは極めて少数ですし、C.Bergonzi ラベルのヴァイオリンも、彼の腕前にしては作った楽器が極めて少なすぎます。
これは、何を物語っているかというと、推測の域は出ませんが、Antonio Stradivari のヴァイオリンの数の多さ、製作従事期間の長さ、そのヴァイオリンの品質の高さは優秀な弟子そして、2人の息子によって支えられていたということなのです。
よく、イタリアの製作家は若いうちは自分で作っているが、歳を取ると弟子に作らせるから良いヴァイオリンが出来ない。若い時の作品で無いと弟子の手が入っているからだめだ。という人がいます。
もしそうだとしたら、Antonio Stradivari の場合、名手と言われる人が今使っているヴァイオリンのほとんどが、いわゆるゴールデンピリオドを過ぎた、最晩年のものが多いという事実はどう説明したら良いのでしょう。
本当は弟子が作ろうがだれが作ろうが、その親方本人のラベルを貼るからには、その親方が認めるものでなくてはならないはずです。(あとで何物かに貼りかえらたものであれば別ですが)
自分自身の技術ももちろん問われますが、弟子を育てる能力、優秀な人材を発掘するという才能も名工の条件なのではないでしょうか。
肝心のヴァイオリンについて述べるスペースが少なくなりました。
とにかく4弦がバランス良く鳴るという印象の楽器です。 この当たり前のことをなかなか満たせないイタリア新作ヴァイオリンが多いのです。
だいたいにおいて、力強さはあっても、低弦の鳴りが悪かったり、浅い響きになりやすいのです。その点 このヴァイオリンは、まさに中庸を得ています。