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このヴァイオリンはSheng Zhong Long 工房の生まれ。
チェロの項でもご紹介しておりますが、Sheng Zhong Long は 1996年 アメリカ VSA (The Violin Society of America) 国際コンクールでヴィオラ部門入賞。 2000年の同コンクールでは、ヴァイオリン音響部門で銀賞を受賞しております。
もはや、彼の実力は世界的なものと言えましょう。
このヴァイオリンは典型的なGuarneri del Gesuのf孔を持っています。
ところが同じデルジェスモデルでも GengXiao Gang1997 のようにおとなしいf孔を持ったものもあります。
これは、デルジェス自体、生涯の間に、実に様々なモデルを作っていたからにほかなりません。だから彼のヴァイオリンの場合は製作年代によってかなりf字孔の大きさも違うのです。
いずれにしましても、楽器作りというものはデルジェスをモデルにしたから、デルジェスに近い音がするというような単純なものではありません。(そんな単純なことなら世の中、ストラド、デルジェスだらけになっているはずです。)
製作者が、ある特定の優れた楽器に共感を覚えたり、またその楽器から霊感を得たり・・・・・。
そういった体験が、製作者にその楽器をモデルにして作りたいと思わせるのでしょう。
その共感や霊感がいったい何なのか、そして、それが新しく作った楽器のどの部分に どう表現されているのかは、製作者の感性、表現する技術、 そして、それを見る人、弾く人の感性にもよるので、大変難しい問題ではあります。
最後に簡単に音に触れさせていただきますと、性能の高さを感じさせてくれるヴァイオリンと言いましょうか、どんな音域においても、スパッと音が立ちあがってくれます。 強音でも決して崩れない音の迫力と弱音での透明感という相反する要素を持ち合わせている類い稀なヴァイオリンでもあります。
このようなヴァイオリンは、また、弦の違い、弓の違い、奏法の違いなどを如実に現してくれます。 それもまた性能の良い楽器を所有する醍醐味と言えましょう。