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イタリア在住、日本人ヴァイオリン製作家Kenji Miyagawa(宮川賢治)氏の楽器の魅力は一言でいうとコンセプトの明確さです。どういう楽器を作りたい何をしたいというのが作ったヴァイオリンを通して強烈に伝わって参ります。このヴァイオリンを始めて見たとき私は言い様も無い衝撃を受けました。それは、この楽器はモダンイタリーMilanoの巨匠Pedrazziniをモデルとしたものなのですが、宮川氏のPedrazzini への憧憬、畏怖の念等々様々な思いが圧倒的な力を持ってヴァイオリンから伝わってきたからなのです。
自分のラベルで作った楽器はまだ少ないというのに、もうこんなヴァイオリンを作ってしまう宮川さんという人は本当に凄い人です。
宮川氏の仕事場は調整、修理・修復ではイタリア屈指と言われる工房。Milanoという土地柄からでしょう、そこにはスカラ座やイ・ムジチを始めとするオーケストラプレーヤー、そして様々なソリストの楽器が修理、調整に持ち込まれます。
当然ながらその楽器の中にはStradivariやGuadagniniなどのオールドヴァイオリン、そしてPedrazziniやGarimbertiなどのモダンヴァイオリンなど数々の名器が含まれてきます。そんな恵まれたポジションに宮川さんはいたのです。
宮川さんはそれらの名器を、修理、調整の傍ら、穴の開くほど見つめたと言います。なるほどその観察眼の鋭さは彼の作るヴァイオリンの随所に現われています。G.Pedrazziniモデルのディテールを見る
音はまさに(カチンカチンではなく)練れたモダンイタリーでしょうか。輝かしさと深さ、強さと甘さを併せ持つまさに1800年代後半から1900年代初めの熟成したモダンイタリーのヴァイオリンの響きを思わせます。新作ヴァイオリンが何故こんな音を出せるのだろうかと誰しも驚きを隠せないと思います。
今までは修理・修復の仕事が無い土日のみにしか楽器製作ができないとこぼしていた宮川さんですが、2004年春には勤めていた工房を円満退職。独立への道を歩まれます。きっと今後は製作台数も増えることでしょう。これからどんなヴァイオリンを作っていってくれるかますます楽しみです。