今回はヴァイオリン(弦楽器)の価格についてお話してみましょう。
おそらく、皆さんが最も気にされているとこでしょう。
ヴァイオリンの値段はどうやって決まるかですが、それは極めて単純です。まず初めに作った人が「いくらで買って欲しい」という価格を提示することで最初の値段が決まるのです。いわゆる「新作ヴァイオリン」を製作者から買う場合はその価格になるでしょう。
製作者の提示する価格は「何とか買って下さい」というへりくだったニュアンスから、「この価格でなければ売らない」というちょっと高飛車なニュアンスまで様々です。それは田舎の美容師と都会のカリスマ美容師の技術料金が全然違うように、また新人無名芸人と売れっ子芸人のギャラが全然違うように、そこにはかなりの価格の開き生じます。
それを仕入れて売る側は、当然商売なので、その製作者が提示した価格に販売経費、利益などを上載せして販売します。これがエンドユーザーが店で購入するときの価格になるわけです。
販売経費は人件費や家賃、為替レートなどを含みますから、同じ製作者のものであっても、例えば仕入れ時期によって為替レートが変われば、販売価格も変わって来るでしょう。
では、製作者が提示する価格はどうやって決めているのでしょうか?
それは
原材料費+手間賃(経費等を含む)
です。
手工弦楽器の場合1台を作り上げるのには概ね2、3か月程度かかります。ですから、ヴァイオリンの代金は、家を建てたり、リフォームしたりするときに大工さんに払う代金と似たところがあります。
その手間賃の基準はその職人の住む都市の物価水準が影響しています。
だいたい、日本、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアなどですと、プロの製作者であれば、ヴァイオリン1台を作る手間賃は最低でも6、70万円になるのではないかと思います。他に生活の基盤を持ってヴァイオリン作りをしているようなセミプロであったり、田舎暮らしで生活費が極端に安いというような場合以外、概ねこの辺りの価格に落ち着くはずです。
それが、先に述べたような美容師や芸人と同じで、ヴァイオリン製作者もカリスマ、売れっ子的な職人になってくると、100万円だ、200万円というように価格が吊り上ってくるのです。
そして、チェロの場合ですが、1台を製作するのにヴァイオリンの4倍ほどの手間がかかるということで、本当はヴァイオリンの価格提示額の4倍の値段が付きそうなのですが、これは慣例で、ヴァイオリンの価格の2倍ということになっています。ですから、ヴァイオリンの場合の製作代金が80万円という人にチェロ製作を頼むと160万円ということになります。
当然、作る側からするとチェロ製作は割の合わない仕事になるわけで、ですから、チェロを注文するときは前金で払わなければいけないというようなことも多いのです。
次回は、新作ヴァイオリンの中でもイタリア新作楽器の価格事情についてお話してみましょう。
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