ヴァイオリンの値段がどうやって決められているか、そのお話の第2回になります。
今回は、イタリア新作楽器の価格の決まり方についてお話しましょう。
前回のブログで私は新作楽器の価格はまず製作者、作り手側が決めると申し上げました。
そして、その価格の根拠は
原材料費+手間賃(経費等を含む)
とも申し上げました。
手間賃とはその職人の日給がいくらかということが基になるでしょうが、それを決めるのは職人の自由です。美容師の技術料のようなものです。ですから結果的に楽器の価格は、自分が売りたい値段、好きに設定した値段になるわけです。
しかしながら、自由に付けられると言ってもそこには暗黙のルールがあります。特にイタリア、クレモナのように狭い地域にヴァイオリン職人が沢山集まっているようなところでは明確な序列が存在します。
それは、巨匠クラス、大御所を頂点とするピラミッド型の価格体系です。そして、人種の違いによるランクも存在します。
まずは上記のようにイタリア人の中で序列があります。好きな値付けをして良いとはいえ、自分よりも上位の製作家の価格を越えた設定はできません。
さらに、人種によっての序列があります。
それは、イタリア人>イタリア以外の白人>有色人種 のような順で高い値が付きます。
つまり、例えばクレモナの中では、どんなに自分が高い値段で売りたくても、大御所クラスが付けている価格を越えた価格の設定はできないということであり、また、日本人や中国人がどんなに素晴らしい楽器を作れたとしても、イタリア人や、他の西欧人、例えばドイツ人やハンガリー人などよりも楽器を高く売ることはできないということなのです。
逆に言えば、イタリア生まれでイタリアの製作学校を出てイタリアで製作してさえすれば、どんなに下手くそなヴァイオリンを作っていても、ある程度高い価格で売ることができてしまいます。
巨匠、大御所クラスの工房でも、その中で製作をしているのは、イタリアの若手職人だったり、東洋人だったりするのですが、大御所のラベルが貼られれば、巨匠の作として立派な価格で売られることとなります。
そして、そこで働いた東洋人が独立して、自分で作り出したとすると、イタリア人はおろか、他の西欧人よりも安い価格を付けなければ楽器が売れないということになるのです。
それでも、巨匠のラベルやイタリアという国籍にこだわりますか?
それでも価格が高い方が必ず、絶対に良い楽器だと思えますか?
もちろん、中にはこれぞ巨匠作、これぞイタリアの楽器というような素晴らしい楽器も存在しますが・・・
それをきちんと皆さん方が見分けることができるでしょうか?
そして売る方もきちんと見分けて良いものだけを売っているのでしょうか?
ヴァイオリンの価格の話、もう少し続けたいと思います。
弦楽器サラサーテでは『間違いの無い楽器の選び方』をご提案しております。