ヴァイオリンの値段はどうやって決められているか、そのお話の第3回になります。
今回は、新作楽器以外の楽器の価格がどうやって決められるかについてお話いたしましょう。
以前のブログで私は新作楽器の価格はまず製作者、作り手側が決めると申し上げました。
原材料費+手間賃(経費等を含む)
とも申し上げました。
それでは、新作楽器ではない楽器の価格はどうやって決まっているのでしょう。
それは、もはや楽器が製作者の手元を離れてしまっているわけですから、
その楽器を今所有している人、現在の楽器の持ち主がまず値段を決めているのです
そして、それを仕入れて売る場合はその価格、つまり持ち主から買った価格に販売店の経費や利益が上乗せされて最終的な販売価格が決まります。
最終販売価格=
仕入れ値+販売経費(利益、人件費、家賃等)
ということですね。
その楽器のオーナーが一人ではなく、何人もの手に楽器が渡っていきますと、上記の式が繰り返されることになります。
そして、持ち主が決める楽器の値段にも基本的にはルールはありません。自由です。
もちろん、オークションの価格や、販売店での実売価格などを参考にすることはあるでしょうが、販売の実績が見つからない、明らかではない製作者の場合もありますし、持っている楽器が本物なのか偽物なのか、健康状態はどうなのか等の要素によっても楽器の値段は大きく変わるでしょう。また、輸入したものであれば、為替レートの影響も受けます。
つまり、楽器の値段の付け方は一様ではないということです。そして、基本的には相手が提示した価格(言い値)で買うか買わないかを判断するということになります。
それではその楽器の持ち主、楽器の仕入れ先にはどういった人(ところ)がいる(ある)でしょうか?
ざっと考えると
製作家の家族、親族、友人
ディーラー、職人
輸入業者、卸
オークション
演奏家
楽器コレクター
アマチュアの奏者、愛好家
個人
くらいは考えられるかと思います。
例えば私の例で言えば、
輸入業者や知り合いのディーラー、仲間の職人から楽器を買うことは日常的にありますが、プロの演奏家から楽器を預かったり、購入することもあります。
製作家の友人という人が突然楽器を持ち込んで来るようなこともあります。
また、自分は楽器を弾かないけれど、父親や祖父が持っていた楽器を売りたいというような全くの個人の方からのお電話もあったりします。
ですから、楽器の持ち主と言いましても、かなり広範囲、多岐にわたっているということになります。
当たり前ですが、我々楽器商は、新作楽器を除いては、誰かから楽器を売ってもらわなくては、楽器を仕入れなければ商売ができません。そして、私が楽器を仕入れるという行為は、人から楽器を買うということにおいて、皆さん方が楽器を購入されるのと全く同じ行為と言えるのです。
私たち楽器商はエンドユーザーに対しては売り手の立場ですが、その前の段階では皆さん方と同じ買い手でもあるのです。
そういった意味では、買い手でもある私が楽器を選ぶときの体験、経験の中には皆様方にも有益な情報があるのではないかと思います。次回はその辺りもお話したいと思います。