人気TV番組「なんでも鑑定団」への出演でお馴染み、中島 誠之助氏の著書に 『骨董の真贋』(二見書房)という本があります。
その中に「鉄人が伝授する鑑賞の鉄則」という大変興味深い内容の記述がありました。それはまさに、ヴァイオリンの世界にも共通し、ヴァイオリンを選定、購入する際に役立ちそうなことが書かれています。そこで、その内容についてご紹介していきたいと思います。
各々の項目についてひとつひとつ、中島 誠之助氏の説明に加え、それをヴァイオリンなど手工弦楽器を選ぶときにどう応用したらよいか(私なりに解釈したものを)順次解説していきたいと思います。
鉄人、中島 誠之助が伝授する鑑賞の鉄則
「 」内は中島氏の言葉 その後は私なりの解釈、解説です。
第 4条 たくさんのものを、時間をかけて見なさい
「さまざまなジャンルのものを、好き嫌いにかかわらず、何でも見ること。
専門外であっても、とにかく一流のものは何でも見るようにすることです。」
これは、弦楽器に限らず、美術品や工芸品等、人間が手で作り出したもの、芸術作品を広く沢山見ることによって、感性が養われるということではないでしょうか。
この第4条は次の第5条と密接な関係があると思います。
もちろん沢山の楽器を見る、弾いてみるのも結構ですが、どのような楽器を見て、弾いたかが重要です。
レベルの低い楽器をいくら沢山見続けたり弾いてみても、楽器を見る眼は決して向上しません。
「楽器を何の脈絡もなく、ただ漫然と色々と見ていただけなので、どれが良いのか悪いのか全くわからなくなってしまった。」
「いったい、どういう基準で楽器の良し悪しの判断をしたら良いのかわからない。」と色々見てはみたものの、ただ混乱を招いただけだったという話も良く聞きます。
ですから、第4条はむしろ、弦楽器店を沢山回るようなことを言っているのではなく、美術館やコンサートに出向いたり、家でCD聴いたり、本を読んだりと、ご自分の眼や耳、そして感性を養うことの重要性を問うているのではないでしょうか。楽器以外の分野で一流のものに触れることは広く、大いにやられるべきだと思います。
楽器については、次の第5条で言われているように、良いもの、本格的なものを見ることができていれば、たとえ見た数が少なくても、充分でしょう。問われるのは量より質だと思います。
第 5条 本物をできるだけ見なさい
「本物を見る、これがいちばん大事なことです。 本物を見続けてこそ、本物の目が養えます。」
弦楽器の場合は第1条のところでも書きましたが、真作ではない、コピーもの中にも楽器としてすばらしいものが
あります。ですから、本物=本格的なもの=良いものと解釈すべきでしょう。
ですから、必ずしも真贋にこだわることはありません。銘器のコピーであっても、師匠のコピーであっても素晴らしい楽器からは見るべきところが沢山あります。それらを排除してはいけないのです。
「最も良いものに触れておけば、良くないものを嗅ぎわける力がつく」 とは 轡田 隆史氏の著書(「考える力」をつける本2)にある言葉ですが、まさにその通りだと思います。
量産品を何軒見て回っても、写真集で穴の開くほど楽器を見つめても、本当の楽器を見る眼を養うことはできません。
何とか、実際にご自分で、本格的な楽器に触れる機会を作ってい
ただきたいと思います。それこそが楽器を見る眼を養い、楽器選びの確かな指標、物差しを得る近道となるはずだからです。
もちろん、当店までご来店いただくことができれば、本格的な楽器を見る、そして触れる、弾くという体験のお手伝いをさせていただきます。是非、ご来店のご予約をどうぞ。
弦楽器サラサーテでは『間違いの無い楽器の選び方』をご提案しております。