人気番組「なんでも鑑定団」でお馴染み、中島 誠之助氏の著作に 『骨董の真贋』(二見書房)という本があります。
その中で「鉄人が伝授する鑑賞の鉄則」というくだりを読んでみますと、ヴァイオリン選びを実践するにあたっても大いに役立ちそうな事柄が書いてあります。それを少しご紹介したいと思います。
各々の項目についてひとつひとつ、中島 誠之助氏の説明に加え、それをヴァイオリンなど手工弦楽器を選ぶときにどう応用したらよいか(私なりに解釈したものを)順次解説していきたいと思います。
鉄人、中島 誠之助が伝授する鑑賞の鉄則
「 」内は中島氏の言葉 その後は私なりの解釈、解説です。
第 7条 人の話に惑わされるな
「他人の話に心が動く人間にかぎって騙されるものです。」
「人の話なんか、どうだっていいのです。自分がいいと思ったら買えばいい。
自分がいやだと思ったら買わなければいい。 人の『話』ではなく、自分の『目』を判断基準にすることです。」
「自分ひとりではどのヴァイオリンにしたら良いか決められない。」
そのようにおっしゃる方が実に多いですね。
確かに、ヴァイオリン(弦楽器)は高い買い物ですし、一生のうちにそう何度も購入する機会のあるものではありません。後悔の無い買い物をと思うと、その決断を自分で下すのは怖いと考えられるのも無理もないことだとは思います。
では、誰に相談したら、誰の意見を聞いたら、決断ができるのでしょうか?
誰に決めてもらえば確かなのでしょうか?
だいたい相談相手として考えられるのは
1) ヴァイオリン教師または演奏家
2) 学校等の先輩
3) 最近楽器を購入したという友人、知人
4) 友人、知人
などではないでしょうか。
でも人それぞれ楽器の見方、考え方、音の好みは違いますし、また楽器の方も1台1台がそれぞれみな違います。そういった中でこれらの方の経験に基づく助言が果たしてどれだけ有効な内容なのでしょうか?
そして、ここで最も重要なことですが、決断を委ねようと考えている相談相手は、どれだけ確かな楽器を見る眼をお持ちなのでしょうか?
先に書きましたように、普通に考えれば、ヴァイオリンを購入する機会は一生のうちにそう何度もあるものではありません。ですから、あなたよりは楽器
を多く見ているといっても、相談しようとしている相手の方が、10回も20回も楽器を購入しているということはまず無いのではないでしょうか?
もちろん、手工弦楽器の場合、多くの本数を見ることは経験のひとつにはなるとは思います、それはまず絶対に必要なことだと思います。しかし、それだけで楽器を見る能力が身につくものではありません。
ポイントはその方が、実際にお金を払って何台も(何回も)楽器を購入しているか否かです。
実際に身銭を切っているのと、ただ、楽器を見たり、試奏しているのでは、真剣みが全く違います。楽器購入の数々の失敗や成功、その体験の積み重ねこそが楽器を見る眼を養うのだと私は考えます。
要は、あなたが相談しようとしている相手も、せいぜい、あなたより購入経験が一度や二度多いだけに過ぎない可能性が大だということです。そういう相手に判断を委ねてしまって良いものでしょうか。
「もし誰かがお金を出してくださるというのなら、もちろんその方に楽器を決めてもらってください。でもご自分でお金を出されるのなら、ご自分で決められますよね」いつも私はお客様にこのように申し上げています。
仮に一旦人の意見を聞いてしまうと、「どんな内容であっても一切気にしない」と前もって心に決めていたとしても、それに左右されないで済ませることは非常に難しいのではないでしょうか。まして、自分よりも立場が上の人や目上の人の意見だったらなおさらでしょう。
それよりも自分で判断し、自分の中で結論が完結していた方が、はるかに精神衛生上良いのではないかと思います。
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