いったいヴァイオリンのどこを見て、どうやって選んでいるのか
私が楽器を見るときに注意して見ているポイントは何かというと、その楽器が「過去の名工が作った良い楽器の雰囲気」をどれだけ多く伝えてくれるものかどうかです。つまり「過去の名工が作った良い楽器」との類似点が多ければ多いほど、良い楽器の可能性が高くなると考えることができます。
ヴァイオリンの他の楽器、例えばピアノやフルートやクラリネットなどは、現在までに材質、機能面など様々な改良、発展を遂げてきました。ところが、ヴァイオリンは200年前と材質、姿は何も変わっていません。確かにヴァイオリンはその間、改良、発展が無かったわけですが、言い方を変えれば、200年、300年前にすでに完成されつくしていたと言えるのではないでしょうか。ですから、ヴァイオリンのエッセンスは「過去の名工が作った良い楽器」にあり、現代の良い楽器の要件もそのエッセンスを持っているか否かにかかっているのではないかと思います。
ほとんどの製作者の最終的な目標は「名器の持つ究極的な音」なのでしょうが、「名器の音」と言っても、それは奏者によって変わってしまうような、目標としては甚だ頼りないものです。ですから音からではなく、スタイルからアプローチするのが最も一般的な考え方、手法です。名工の楽器のスタイル(かたち)を模倣することによってその音をも手に入れよう(手に入れたい)と考えるのが伝統的なアプローチの仕方なのです。
それでは「良い楽器の雰囲気」というものはどうやったら作り出すことができるのでしょうか。
私の勝手な推論ですが、それに必要なのものは、良い楽器を正しく見てそれを把握することができる職人の眼(ソフト)であり、見たものをそっくり形にすることができる技術(ハード)ではないかと思っています。
まず良い楽器があるということ。そしてそれを良く見ること。そしてそれを見て感じたものをきちんと現す力があるということです。
もちろんその「良い楽器の雰囲気」が「良い音」に結びついてくれなくては困ります。
ですからやはり音のチェックは不可欠になります。でもこれは最後の最後にテストすれば良いことなのです。
最初に音から入ってしまうと音色(主観的な尺度)は良いけれど、性能(客観的な指標)は悪いという楽器をつかんでしまうことがありますから・・・
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