COCQ 83953/56 SU 4077-2
ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集 ヨゼフ・スーク
ヴァイオリン:ヨゼフ・スーク ピアノ:ヤン・パネンカ
録音:1966年 ~1967年
いつものようにHMVのサイトで輸入CD新入荷の案内を見て何気なくポチッとしてほどなく届いたのが、右の画像スプラフォン SU 4077-2 。
今までスークのベートーヴェン全集は持っていないからと、その時は結構確信を持って買ったCDだったのですが、届いてみて何だか不安に・・・。ひょっとしたら前に日本盤で買っていたかもという気が猛烈にし出しました。
その漠然とした不安は、すぐに現実に。CD棚を探すこと数分。見つかりました左の画像、コロンビア COCQ 83953/56が。
これはスプラフォン原盤ですが、コロンビアから発売になっていたもので、MS(Mastersonic)といういわゆるリマスタリングCD。24-bitプロセッシングをしたものでした。ああ、MS、24-bitプロセッシングという最新のリマスタリングものがあるのに、従来盤を買ってしまうという何たる失態。気分が凹みます。
でも、確か何かHMVのサイトに美味しいことが書いてあったような記憶も・・・。そこで気を取り直してHMVのサイトをもう一度良く読んでみることにしました。すると、
このたび本家SUPRAPHONでもオリジナル・マスターより最新リマスタリングが入念に施され、音質向上がはかられているとのことですので、その効果に期待したいところです。
との記述がありました。実際、ライナーノーツを確認しますと2011年マスタリングとのこと。これはHMVの言葉ならずとも、音が期待できるではありませんか。
一方、コロンビアMS盤はと言いますと、残念ながら正確なマスタリングの日付はわからないのですが、2005年4月の発売ですからそれより以前は間違いのないこと。これでSU 4077-2を買った意義が見いだせて一安心しました。
そして、これはブログネタとしても使える~と。今回はそういうわけで、スークのベートーヴェン、ヴァイオリン・ソナタ全集。国内盤COCQ 83953/56と最新マスタリング輸入盤SU 4077-2の聴き比べということになりました。
一聴したところ、両者の違いはほとんどわかりません。コロンビア盤COCQ 83953/56の再生レベルの高さが目立つぐらいです。ですからちょっと聴くと、コロンビア盤の方が音に張りや勢いがあり聴き映えがします。
次に再生レベルをだいたい同じに合わせて聴き比べます。すると今度は順位が逆転。スプラフォン盤 SU 4077-2の音像の小ささ、音の密度の高さが途端に際立って参ります。
その結果ヴァイオリンの音像、ピアノの音像、ホールトーンなどが明確に分離し、音場がクリーンに見渡せるだけでなく、演奏の隈取までもがはっきりとしてきます。
日本盤はと言うと、大きめの音像が平面的に並んでいるだけで全体のピントが甘い感じです。その結果、響いている感じはしますが、全体的にワンワン響いていて、演奏者が神経を払って弾き分けている演奏の細部が見通せない感じになってしまっています。
これは、明らかにスプラフォン盤に軍配が上がりますね。マスタリングも新しければ良いというものでは決してないとは思いますが、どう音をまとめるかエンジニアのセンスが問われると思います。
さて、演奏にも少しは触れておかなければいけませんね。1969年度レコード・アカデミー賞受賞とのことですが、これまでこのブログでご紹介してきたような優しい美音の キャプソンのベートーヴェンのヴァイオリンソナタ演奏 や一小節、一音ごとに音色やリズムの仕掛けがある カントロフのベートーヴェンのソナタ などとは違い、音はやや細めでフレージングやテンポはごく常識的。録音も年代のせいか、それほど音の伸びが感じられず、レンジも狭めですが、聴けば聴くほど味があると言いますか、ヴァイオリンの音よりも作品自体に聴いている方の気持ちが入って行く気がいたします。