LYR 141
イザイ 無伴奏ソナタ全曲
ソナタ第1番 ヨーゼフ・シゲティに献呈
ソナタ第2番 ジャック・ティボーに献呈
ソナタ第3番 “バラード” ジョルジュ・エネスコに献呈
ソナタ第4番 フリッツ・クライスラーに献呈
ソナタ第5番 マティユ・クリックボームに献呈
ソナタ第6番 マヌエル・キローガに献呈
録音:1994年 9月
ロラン・コルシアは1964年生まれ。パリ国立高等音楽院を卒業後、英国王立音楽大学にて更なる研鑽を積み、ミシェル・オークレールに師事しました。在学中に、最も学校に貢献した学生に贈られるクイーン・エリザベス賞を授与。その後、パガニーニ・コンクール、ロン=ティボー国際音楽コンクール、ジノ・フランチェスカッティ国際コンクール等、数々の権威あるコンクールで優勝を果たしました。1999年からはStradivari 1719“Zahn”( LVMH財団より貸与)を使用しています。
彼の演奏スタイルは、ひとことで言ってしまえば自由奔放。まさに切れば血が噴き出るような演奏ですね。ジャケットの写真からもちょっとワルそうな雰囲気が漂ってきていますよね。しかし、それは恣意的だったり、自分に酔っているだけの演奏とは違います。また激しいだけの血の気の多い演奏とも違います。一見感情にまかせて弾き崩しているようですが実はそうではないのです。
コンクールや発表会、試弾会等でこの曲が弾かれるのを聴いていると、例えばソナタ第1番や第6番等でいったい何を弾いているのか全くわからない演奏に出くわすことがあるのですが、おそらくそういう演奏の場合、演奏者もどう弾いて良いかわからず弾いていることが多いのではないでしょうか。弾いている人間がわかって弾いていないのですから聴き手がわかるはずはありません。そういった人は楽譜に従って音符をただ羅列しているだけ、ただ音にしていっているだけに過ぎないのです。
コルシアの演奏の場合は積極的に曲に変化をつけることによって、聴き手に曲が驚くほどわかりやすく伝わることになります。曲の構造やフレーズ、コルシアの解釈がはっきりするからです。楽譜に生命を吹き込むとはそういうことなのだと思います。
それを可能にしているのは彼の盤石なテクニックです。そのおかげでどんなにテンポやダイナミックスの変化をつけても決して音の純粋さ、明確さが失われないのです。その結果、音楽のかたちが崩れないのです。
録音は彼のダイナミックな演奏スタイルを的確にとらえた鮮烈なものです。明快な録音にもかかわらず意外と演奏ノイズが少ないのは、やはりコルシアの弾き方がワイルドに聴こえながらも、発音自体が決して汚いものではないからですね。
楽器は1999年からはStradivari 1719 “Zahn”を使用ということですが、この録音は1994年ですからそれではないのでしょうね。それにしても良いヴァイオリンの音だと思います。