aeon / MAECD-1088
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチョーゾ Op.28
サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 Op.61
ショーソン:詩曲 Op.25 ~ヴァイオリンと管弦楽のための
イザイ:悲しき詩op.12~ヴァイオリンと管弦楽のための
ヴァイオリン:テディ・パパヴラミ
F=X・ロート指揮 リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団
使用楽器:Christian Bayon 2005 Lisbon
録音:2009年 6月
パステルトーンと言いましょうか、決してギラついたところの無い淡い音色でまとめられた好演だと思います。独奏ヴァイオリンは曲のクライマックスに達するようなところでも、煽るようなテンポを取らずにしっとりと歌い上げます。
パパヴラミはアルバニア生まれではありますが、パリ音楽院でピエール・アモイヤルに師事しているとのことです。フランス音楽に適性があるのも当然ですね。
白眉はサン=サーンスの協奏曲の第2楽章でしょうか。早めのテンポでさらっと弾いていますが、コクと香りが抜群です。そして終結部ではぐっとテンポを落とすのです。始めから遅いテンポを取らなかったのはここを生かしたかったからなのでしょう。
ベルギーのオーケストラの音色がまたパパヴラミのヴァイオリン独奏に対して抜群の相性を示しています。
このディスクは、フランス音楽の演奏のひとつの模範と成り得るCDではないかと私は思います。
パパヴラミの使用している楽器はChristian Bayon2005年作。最近新作ヴァイオリンを使う演奏家は増えてきてはいますが、ここでもまた堂々と新作楽器が使われていますね。
Christian Bayon はパリ生まれですが現在はリスボン在住とのこと。
低音域の適度のこもり音、ふくよかさはこのヴァイオリンが新作であることを完全に忘れさせてくれます。ただ、今回の曲には良く合っていたと思いますが、(これは録音の問題でもあるかもしれませんが)私の好みからすると、もう少し高音の抜け、力が欲しい気もいたします。楽器の問題なのか録り方の問題なのかパパヴラミの他の曲の録音も聴いて確かめてみたいと思います。
クレモナの銘器を使う演奏家、あるいは使いたいと思っている演奏家もまだまだ多いこととは思います。確かにそれらの楽器には音以外に、200~300年生き抜いてきたという、物としての圧倒的な存在感がありますから、抗しがたい魅力があるのは事実だと思います。ただ純粋に音で選んだ結果、新作を使うようになったというような演奏家たちが所有する楽器の産地を調べてみますと、クレモナ、イタリアに集中しているわけではないことがわかります。演奏家が新作を選んで使っているという時点で、イタリア信仰が無くなっていると言えるでしょうし、また、ヴァイオリン製作側でも、イタリア以外でも充分に名器の研究が進み、優れた製作家によって現代の名器が生み出されて来ているということなのでしょう。