1936年生まれのフランスのヴァイオリニスト、ジェラール・ジャリによるヴァイオリン小品集です。
彼は15歳という若さでロン=ティボー国際コンクールに優勝し、1960年ごろからはパリ・オペラ座管弦楽団のコンサートマスター、1970年にはパイヤール室内楽団のコンサートマスターに就いています。
ジェラール・ジャリというと、私はパイヤール室内楽団のリーダーとしての活動しか知らなかったのですが、若いころからソリストとしても活動していたのですね。
このCDはそのジャリのソリストとしての一面を示す一枚ですが、実にエレガントで心休まるディスクとなっています。
こういった小品をさらっと歌って、しかし決して単調、淡泊に聴こえないように弾くというのはなかなか簡単にできることではありません。おそらくこういう弾き方は日本人が考えているいわゆる「歌う」という行為、感性とはちょっと違っているのではないかという気がいたします。
よく聴いてみますと、エレガントで穏やかに聴こえるのですが、フレーズの捉え方、フレーズの切り方はすごく明快なことに気が付きます。また間の取り方、テンポの揺らし方が絶妙ですね。そういった弾き方により、言わば句読点がはっきりしているので、音楽のかたちがすごく良く伝わってくるのだと思います。
それをフランス人の“エスプリ”とか“粋”と言ってしまうのは簡単かもしれませんが、なんとか日本人もそういったセンスを演奏に取りこみたいものですね。
私がこのCDの中で特に気に入ったのはグラナドスのスペイン舞曲とクライスラーの美しきロスマリン。句読点の付け方に気を付けて聴いてみてください。
エルガー:愛の挨拶 R.コルサコフ:インドの歌
ポルティーニ:踊る人形 クライスラー:美しきロスマリン
チャイコフスキー:秋の歌 マルティーニ:愛の喜びは
グラナドス:スペイン舞曲第5番 パラディス:シシリエンヌ
フォーレ:夢のあとに クライスラー:愛の悲しみ
マスネ:タイスの瞑想曲 チャイコフスキー:メロディ
ドビュッシー:レントよりおそく クライスラー:愛の喜び
フォーレ:子守歌 ドヴォルザーク:ユーモレスク
ラヴェル:ハバネラ形式の小品 フォーレ:アンダンテ
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
ピアノ伴奏:ダリア・オヴォラ 1990年録音