UCCD-1392
ツィゴイネルワイゼン~ユリア・プレイズ・サラサーテ
サラサーテ:
・スペイン舞曲第7番 Op.26-1
・スペイン舞曲第8番 Op.26-2
・ホタ・アラゴネーサ Op.27
・アンダルシアのセレナード Op.28
・ナイチンゲールの歌 Op.29
・スペイン舞曲第1番『マラゲーニャ』 Op.21-1
・スペイン舞曲第2番『ハバネラ』 Op.21-2
・スペイン舞曲第3番『アンダルシアのロマンス』 Op.22-1
・スペイン舞曲第4番『ホタ・ナバーラ』 Op.22-2
・スペイン舞曲第5番『祈り』 Op.23-1
・スペイン舞曲第6番『サパテアード』 Op.23-2
・バスク奇想曲 Op.24
・ツィゴイネルワイゼン Op.20
ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー ピアノ:ミラナ・チェルニャフスカ
録音:2013年7月
ユリア・フィッシャーのサラサーテ作品集。サラサーテと言えばまず『ツィゴイネルワイゼン』が真っ先に思い浮かびますが、その他の曲は意外と知られていないもの。ですから、このCDは普段聴かれない作品も収録した注目のアルバムと言えるでしょう。(でも何故か『序奏とタランテラ』が収録されていませんね。残念!)
ユリア・フィッシャーはかのアナ・チュマチェンコ門下。4歳からヴァイオリンとピアノを始め、ピアノの腕前も相当なものであることはこのDVD 天は三物を与えた? でも実証済み。23歳の若さでフランクフルト音楽・舞台芸術大学の教授に就任したと言いますから驚きです。(ドイツ史上最年少記録)
録音は高域の伸びが素晴らしく、ハーモニックス(フラジオレット)が冴えわたります。もちろん彼女の技術が確かなことは間違いないのですが、これだけ澄み切ったハーモニックスが聴けるCDも珍しいのではないでしょうか。
『ナイチンゲールの歌』をお聴きになれば、実音とハーモニックスが入り乱れるチャーミングで美しい演奏をお楽しみになれると思います。
実はこのCDを聴く上でのもう一つの魅力は彼女の高音の美しい音だけではありません。それはワイルドとも言える彼女のダイナミックな弾きっぷりにもあります。低音で音が割れたり、ピッツィカートで指板に弦がぶつかることもお構いなしという野性的な面も見せてくれます。
スペイン舞曲第4番『ホタ・ナバーラ』、スペイン舞曲第2番『ハバネラ』 、スペイン舞曲第6番『サパテアード』などを聴かれればそのダイナミックな弾きっぷり、鮮やかな技巧に必ずや度肝を抜かれることでしょう。
しかし、『ツィゴイネルワイゼン』は上手な演奏には違いないのですが、あまりにも切れ味鋭く、洗練し過ぎていてアクが足りないと言いますか、民族的な“血”を感じさせるところが少し不足しているように感じました。でもユリア・フィッシャーにしてみればそんな要素を取り入れるのは“野暮ったい”ということかもしれませんね。
ところでユリア・フィッシャーの楽器ですが、J.B.Guadaganini 1750年を使っているという話は聞いたのですが、WEB情報に因りますと Philipp Augustin 2011年作を購入したともあります。このレコーディングに使われたヴァイオリンがそのいずれかは不明ですが、更にネット検索を進めますと興味深い書き込みを見つけました。それはこちらです。
それによりますと、Guadaganini と Philipp Augustin をユリア・フィッシャーが同じ曲で弾き分けているというのです。良く読んでみますと、違う日、違う場所なので厳密な弾き比べにはなっていないようです。また、TV収録の音声のためあまり音が良くないという断りがあります。まあ、どちらにしてもYouTube上なので音は良くないと思いますが・・・
いずれもトークショーのような番組で、ドイツ語なので何をしゃべっているのか私にはチンプンカンプンなのですが、しばらくするとユリア・フィッシャーが生でクライスラーの『レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース ティーヴォ』の一部を弾きます。
何やら 弾く前に Philipp Augustin とか Guadagnini と言っているところぐらいはかろうじて聴き取ったのですが、その他はアウトです。ドイツ語の堪能な方ならこの番組、きっと楽しめますね。