Tbm 480 166-4 (XRCD) DG 436754-2(従来盤)
XRCDと従来盤を聴き比べる
Diabolus in Musica
パガニーニ ヴァイオリン作品集 サルヴァトーレ・アッカルド
・カプリース 第13番より テーマ
・協奏曲 第2番 第三楽章 “La Camanella”
・カプリース 第5番
・協奏曲 第4番 第三楽章
・英国国歌 God save the king による変奏曲
・カプリース 第24番
・協奏曲 第3番 第三楽章
・カプリース 第1番
・協奏曲 第1番 第三楽章
・無窮動
ヴァイオリン:サルヴァトーレ・アッカルド
指揮:シャルル・デュトワ ロンドンフィルハーモニー管弦楽団
XRCDは以前に、オイストラフのヴィオラ などでもご紹介いたしましたが弦楽器の再生にはメリットが大きいように思います。
今回は従来盤と比較してみました。
従来盤はパガニーニのヴァイオリン曲全集とも言えるもので、このXRCD盤はそこからの抜粋になっています。
従来盤もアナログ期の録音とは思えない好録音で、ヴァイオリンの魅力、パガニーニの魅力を充分伝えてくれるものです。ですが、今回のXRCD盤と比べてしまうとちょっと歩が悪いようです。というよりも、XRCD盤の音がちょっと凄すぎますね。比較しなければ充分従来盤も良い音だと思うのですが・・・。
それでは、何が違うか・・・ですが。
オーケストラ伴奏の曲に於いては、オーケストラ広がり感、空気感がかなり違っています。XRCDで聴くと、オーケストラがスピーカーの幅一杯、あるいはスピーカーの外にまでも広がるように聴こえます。そして弦楽器の細かい動きなどが鮮明に手に取るように聴こえてくるのです。
また、パガニーニはオーケストラにトライアングル、シンバルなどの打楽器を加えることが多いのですが、そういった金属系の打楽器の音がうるさくなく、しかしはっきりと聴きとることができます。
従来盤ですと、打楽器の音などがややお団子状になってしまい、したがってすこしうるさく感じるきらいがあります。2曲目の“La Camanella”のトライアングルの音色を聴き比べてみてください。
ソロヴァイオリンの音については高い音の抜けの良さがXRCDと従来盤では相当違って聴こえます。
XRCDは高弦の抜けが素晴らしく、それでいて全く金属的な刺激臭はありません。これぞパガニーニというスカッとした響きが、アッカルドの好演も相まって楽しめることと思います。
独奏曲はオケ伴奏の曲ほどパッと聴いた時に違いは感じません。オケのような空間の広がりの違いが無いからです。
が、良く聴いてみますと、アタックの強弱、弓使い等そういった細かい奏法の変化を気付かせてくれるのはXRCD盤の方です。弓が弦を噛む瞬間の音までわかるというような感じでしょうか、大変生々しく、臨場感があります。従来盤は滑らかですが、こうやって比較してみますと、アタックや弓使いが曖昧に聴こえ、演奏の生命感が失われてしまうように思います。例えば最後の無窮動を聴いてみられれば明らかだと思います。
というわけで、この聴き比べはXRCDのメリットがかなり感じられるという結果になりました。
構成がヴァイオリン協奏曲、カプリースからの抜粋なので、もう少し聴きたいという気持ちが残りますが、オーディオ的にもそして音楽的にも楽しめる充実したCDなのではないでしょうか。