GD-2037
ヨハンナ・マルツィ小品集
ラヴェル:フォーレの名による子守歌
ラヴェル:ハバネラ形式の小品
ミヨー:イパネマ
ファリャ:スペイン舞曲
シマノフスキ:夜想曲とタランテラ
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第32番ヘ長調 K.376
ヴァイオリン:ヨハンナ・マルツィ ピアノ:ジャン・アントニエッティ
録音:1951年 8月
これはLPからの復刻CDです。ですからSP盤ほどではないですが、サーフェスノイズや歪ははっきり言ってあります。それらを電気的に除去する方法もあるのですが、このグリーンドア音楽出版はノイズキャンセラーを使わない方針で復刻しています。
そのため、最新録音に慣れた耳には最初つらいと思います。でも少しそれを我慢して聴き続けてみてください。そうすると何とも言えないヴァイオリンの生々しい音が聴こえてきませんか?
むしろ最新録音よりも、ヴィブラートの変化が手に取るようにわかるような気がいたします。それによって演奏者の心がより身近に伝わってくるように思うのです。
ですから、このような復刻CDは決して懐古趣味などではなく、ある意味現代録音よりリアルな演奏家の息吹を伝えてくれる貴重な音源だと私は思います。
演奏は軽妙にして優美、どの曲も品格を失うことはありません。フバイ、カール・フレッシュというハンガリーの伝統に基づいた演奏法なのでしょうかヨーロッパの懐の深さを感じさせてくれます。
その優美な音色が最高に生かされているのはやはりモーツァルトでしょう。モーツァルトならではの愉悦感が見事に表現されています。
ヨハンナ・マルツィは1924年、ハンガリー生まれ。10歳でリスト音楽院に入学。13歳でブタペストで初リサイタルを開きます。戦後の1947年ジュネーヴ国際コンクールで優勝。53年イギリス、57年アメリカ合衆国にデビューするなど活動を広げていきました。
彼女の楽器はCarlo Bergonzi 1733“Salabue, Martzy”。右の書籍中にその美しい姿を見ることができます。同書籍の記述に因れば、マルツィの夫が1936年に購入したとありますが、元はコレクターのタリシオが生涯所有していたもので、その後もコレクターの間を渡り続け、ついにヨハンナ・マルツィの所有となったのです。
もちろん“Salabue,Martzy”という銘は彼女の死後につけられたものでしょう。彼女は全てのレコーディングにこの楽器を使ったと言われています。
このヴァイオリンは現在でも素晴らしく状態の良い楽器で、日本でも2003年4月9日(浜離宮ホール)、ジェラール・プーレの手によって楽器の演奏披露が行われました。