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ラプソディ~ロザンヌ・フィリッペンス

ラプソディ~ロザンヌ・フィリッペンス CD

CCSSA 35013
ラプソディ~ロザンヌ・フィリッペンス

ラヴェル:演奏会用狂詩曲《ツィガーヌ》
ヴァイオリン・ソナタ第2番
バルトーク:ラプソディ第1番 Sz.86, BB.94
ラプソディ第2番 Sz.89, BB.96
ルーマニア民俗舞曲 Sz.56, BB.68(セーケイ編)
フバイ:チャルダッシュの情景第4番《ヘイレ・カティ》 Op.32

ヴァイオリン:ロザンヌ・フィリッペンス
ピアノ:ユーリ・ファン・ニーウカーク
使用楽器:Michael Angelo Bergonzi c.1750 Cremona
録音:2012年11月

このCDのソリスト、ロザンヌ・フィリッペンスは私は初めて聞く名前ですが、オランダのハーグ王立音楽院、ドイツのハンス・アイスラー音楽大学で学び、2009年のオランダ国際ヴァイオリンコンクールで第1位ということです。
実は私が注目したのは楽器のこと。オランダの名門オーケストラ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の名コンサートマスターだったヘルマン・クレッバースの楽器、Michael Angelo Bergonzi を使用とライナーノーツに記載があります。

Michael Angelo Bergonzi は有名なCarlo Bergonziの息子にあたります。Carloほどではないにしても、かなりの名器には違いありません。確かシュロモ・ミンツもこの製作家Michael Angeloの楽器を使っていたことがあったと思います。その楽器は今、宗次コンクールの入賞者への貸与楽器になっているはずです。

さて、演奏を聴いてみましょう。非常にクリーンな演奏で全くと言って良いほど雑音を含んだ汚い音は出しません。しかし、それが良いかと言うと実はそうとも言えないところが複雑です。感情の赴くままに激しい音、汚い音を聴かされるのも辛いものですが、雑音成分が全く聴こえないというのも、パワー不足というか物足りなさ、食い足りなさが残ります。
決して単調なわけではなく、良く歌ってはいるのですがどうしてもどこか醒めた演奏に聴こえてしまいます。
私が思うには、いわゆる「食いつき」と呼ばれる弓が弦を捉える文字通り弦を噛む瞬間の音が全くと言って良いほど聴こえてこないからなのではないかと。発音の瞬間、思わず雑音成分を含んだ音が出てしまうことがあるのですが、適度な雑音成分は演奏に迫力をプラスしたり曲の盛り上げに効果的なこともあるのだと思います。
ラベルのソナタの1楽章のような曲は曲想から静かな滑らかな音造りで良いのですが、このCDのタイトルにもなっている、プログラムの大半を占めるラプソディックな曲に於いては、そのような音ではどうしても民族的な“血”が感じられません。

それでも、このCDの中で良いと感じた演奏は最後に収録されているフバイのチャルダッシュの情景第4番。これは他の曲と比べて見違えるほど音が伸び、生き生きとしたものとなっています。
特に高音の伸びを、例えばバルトークのルーマニア民俗舞曲と比べてみてください。楽器の調子なのか、マイクセッティングの違いなのかその要因は良くわかりませんが、随分と違って聴こえるのがおわかりになると思います。この音、演奏ならば、名器の音を聴いたという満足感に浸れるように思います。