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優秀録音CD・ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 全集| イタリア合奏団

ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 全集 CD

COCQ 85110-1
ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 全集

ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 全曲
ドニゼッティ:弦楽四重奏曲第3番、第5番(弦楽合奏版)

イタリア合奏団
録音:1987年7月、8月   コンタリーニ宮

弦楽器の響きの美しさでは傑出した優秀な録音のCDですね。きっとどなたにも弦の魅力をたっぷりと味わっていただけることと思います。

私もかつてはオーディオ装置のチェックには必ずこのCDを使っていました。それは人口臭が無く、弦楽器の生の音に極めて近い雰囲気を持ち、なおかつ録音会場の豊麗な響きをたっぷりと収録したものだったからです。
デジタル時代になってからしばらく弦楽器の再生は難しいと言われていました。それはもちろん再生する装置の側の問題もあるわけですが、それだけではなく、実は録音側にも問題はあったのです。
打楽器やピアノのようなパルス成分の多い楽器の録音に対しては、リニリアティの良いデジタル録音がアナログ録音を確実に凌駕した感が強かったものの、弦楽器の音に関してはそうでもありませんでした。むしろ、弦楽器の質感が冷たかったり、高域が金属的であったりと、どうしてもしなやかさや艶のようなものが足りないという印象が、デジタル録音初期には強かった記憶があります。
DENONレーベル(日本コロンビア)ではこの問題を無指向性マイク(B&K社製)を使用することや、場合によってはワンポイント録音なども試みるなど、マイクアレンジ等でデジタル録音の問題点を解決しようとしていました。それによって得られたのはナチュラルな音場感でした。このCDはそういった一連の技術的なアプローチの中での成功作と言えるでしょう。

まず、録音した空間(コンタリーニ宮)の素晴らしいアコースティックがあると思います。
DENON、イタリア合奏団は好んでこのコンタリーニ宮で録音をしていますが、本当にうっとりするような響きです。(このロッシーニの録音ではありませんが、別の録音時のレポートが 高木綾子「イタリア」録音レポート にありました。)弦楽器とこのコンタリーニ宮の音響の相性は抜群ですね。
残響は豊かなのですが、フォーカスはしっかりしていて細部がぼやけることはありません。高弦がとても艶やかで華やかですが、神経質な響きではなく暖かさを感じさせてくれます。
透明で透き通るようなガラスのようなツルツルに磨き上げた美音ではなく、微妙な毛羽立ちがある布の表面のような音なのです。弓で弦を擦って音が出るまでの微かなざわめきのような雰囲気を良く表しているように思います。
そしてコントラバスが所々で大活躍するのですが、ゴリゴリしたタイトな低音ではなく、軽やかで伸びやかな音に録れています。それがまたコントラバスのユーモラスな側面を良く表しているようで、思わず笑みがこぼれます。

屈託のない伸びやかな演奏もまた、曲想に良くマッチしています。まさにイタリアのカンタービレ!一部音程があやしかったり、アンサンブルが乱れたりするところもありますが、この演奏にそんな重箱の隅を突っつくようなコメントは野暮と言うものでしょう。モーツァルトとはまた違った愉悦感溢れる極上の音楽がここにあります。

この「弦楽のためのソナタ」が作曲されたのはロッシーニが12歳のとき。そういった早熟の天才という意味でもモーツァルトに通ずるものがありますね。
6曲のソナタは弦楽4部、ヴィオラを抜いたヴァイオリン2、チェロ、コントラバスというちょっと変則的な編成で演奏されます。管楽4重奏でも演奏される機会がありますが、オリジナルはこちらの弦楽版です。

現在はCOCO-73144-5 ブルースペックCD仕様で再発されています。