SRCR-1538
ヴァイオリン名曲集
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリッチョーソ
マスネ:タイスの瞑想曲
クライスラー:美しきロスマリン、ロンディーノ
愛の喜び、愛の悲しみ
ドヴォルザーク/クライスラー:スラブ舞曲第10番、ユモレスク
バッハ/ウィルヘルミ:G線上のアリア
ラフマニノフ:ヴォカリーズ
ヴァイオリン:海野 義雄 ピアノ:伊達 純 森 正指揮 :CBS交響楽団
録音:1969年、1974年(ピアノ伴奏曲)
コンマス、ソロアルバムシリーズを続けます。日本のコンマスと言ったらまずこの人。海野義雄のCDを今日はご紹介いたします。
海野 義雄は1936年生まれ。1959年には弱冠23歳でNHK交響楽団のコンサートマスターに抜擢されました。1963年に渡欧。ミシェル・シュヴァルベ、ヨーゼフ・シゲティに師事。1967年にはムジークフェラインでヨーロッパ楽壇にデビュー。同年、ドイツグラモフォンにメンデルスゾーンとチャイコフスキーの協奏曲をレコーディングし、日本人初の海外レコード録音として空前のベストセラーとりました。
教育者としても多くのヴァイオリニストを育てました。1970年に東京藝大の非常勤講師になり、1975年には史上最年少39歳で教授に就任しました。
ところが1981年にいわゆる藝大事件 で裁判沙汰となり演奏活動が制限されることとなります。有罪判決確定後は一旦ヨーロッパに居を移し、1985年からヨーロッパでの音楽活動を再開しました。ジュネーブ国際音楽コンクールの審査員を務めるなど、海外では充分活躍することができました。89年には日本に帰国し、日本での演奏活動も再開しました。東京音大学長、桐朋学園特任教授を務めました。
このCDの演奏、実は久しぶりに聴いたのですが、その素晴らしさに改めて感動いたしました。特にツィゴイネルワイゼンとロンカプの上手さは普通ではありません。江藤俊哉の芸術 のときも感じましたが、このように音に力があって、ぐいぐい押してくるような弾き方をする演奏家が今の若い日本の人たちにはいないなあというのが実感ですね。この腕前だったら日本で干されて活動できなくなっても海外で充分通じるはずです。やはり、海野、江藤は日本のヴァイオリン界の二大巨匠と言えるでしょう。役者が違うという感じですね。
海野は1980年に、バロック名曲集の録音(32DC 1013)も残しておりますが、これもヴァイオリンを鳴らしきった、堂々たる名演だと思います。もちろん、録音した時代が時代ですから、古楽器的な奏法などを取り入れたものでないことは言うまでもありません。その点、音楽学者からはもはや時代遅れの演奏と言われかねませんが、時代考証など抜きに、聴いていて心地よい、感動できる演奏は面倒な理屈抜きに、良い演奏だと言ってしまっても良いのではないでしょうか。
また、おけいこ名曲でもある、ヴィターリのシャコンヌ、コレルリのラフォリア、エックレスのソナタなどを折り目正しく、充実した音、正確なテクニックで演奏してくれていることは、教材としても大変有難いことだと思います。
海野 義雄は1698年製(いわゆるストラディヴァリのロングパターン時代のヴァイオリン)Stradivari“Thulow”を所有したことで知られていますが、WEB上の情報に因るとその購入は1973年との記述がありました。