「オペラ座のお仕事 」世界最高の舞台をつくる 三澤洋史
オペラ座のお仕事
世界最高の舞台をつくる
東京、ミラノ、バイロイト、北京・・・世界のオペラ座の知られざる舞台裏へようこそ!
三澤 洋史著
早川書房
ISBN 978-4-15-209489-6
これは新国立劇場・合唱指揮者の三澤洋史による、著作です。
合唱指揮者と言いますと、私も恥ずかしながら、ベートーヴェンの第九などの公演の際に、カーテンコールの際に呼ばれて出て来る人というくらいの認識、知識しか持っていませんでした。
ですから、この本を読んで、合唱指揮者の普段の仕事ぶり、そしてその苦労。そしてその苦労が報われたときの喜びなどが良くわかり、大変面白く読めました。
また、世界の有名歌劇場の違いなど、実体験に基づいているので、オペラについては門外漢の私にも大変わかりやすく、楽しく読めました。
言わば、黒子のような役割で表には出てこないので、仕事の内容がよくわからない合唱指揮者ですが、裏では作品上演のために大変な苦労をしていたのです。
まずは演出家や指揮者とのやりとりの大変さ。芸術家は皆我が強い人たちばっかりですから、その中でやっていくのは相当エネルギーの要ることだと思います。
ただ、外人とのやり取りの場合は、自分の主張を徹底的に言い合うことで結果的に上手くいくことが多いということで、いわゆる和を重んじる日本人的なメンタリティーではダメだということです。
対外国人の場合、一時対立したとしても、自分が大切にして絶対に譲れないものがあるということが相手に理解されると、リスペクトしてくれるようになり、その後はウソのように関係が良くなるのだとか。
人間関係において自分さえ折れればと、つい後退りしがちな日本人には大変考えされられる話です。
そして、作曲家の様式や劇場の特性に合わせて、合唱団への発音や発声法を細かく指導し、試行錯誤しながら変えていくところなど、作曲家、作品に真に奉仕しようとする姿が眼に浮かぶようで、感動的ですらあります。
弦楽器関連の本ではありませんが、芸術に関わる者の姿勢がどうあるべきかということを教えてくれる良き書籍として、お読みになられることをお薦めいたします。