『Partners in Time』 Tasmin Little ( タスミン・リトル)
(BIS-CD-1744)
演奏:Tasmin Little(Vn) John Lenehan(Pf)使用楽器:
G.B.Guadagnini 1772
A.Stradivari 1708 “Regent”
(英国王立音楽アカデミーから貸与)
クライスラー:前奏曲とアレグロJ.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタホ長調BWV1016モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第17番ハ長調K.296
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第2番ト長調Op.13
チャイコフスキー:メロディ
バルトーク:6つのルーマニア舞曲
Stradivari (ストラディヴァリ) と Guadagnini (ガダニーニ) の聴き比べができるCD
もちろん、このCD自体はそういった企画で制作されたものではないが、2種類の銘器を使って曲を弾き分けてくれたために、結果的にそういう美味しい使い方ができるCDとなったわけである。差し障りがある場合もあろうが、このように使用楽器を明記してくれると大変有難い。
Tasmin Little(タスミン・リトル、タズミンとも言う)はロンドン生れ。ユーディ・メニューイン・スクール、ギルドホール音楽大学に学び、さらにカナダのローラン・フェニヴに師事して研鑽を積んだ。
日本ではあまり知られていないが、イギリスで人気が高いのはもちろんのこと、世界中で活躍し、特に優れたディーリアス演奏家として名高い。 日本でのリサイタルがBSの『クラシック倶楽部』 で放映されたことがあるので、それをご記憶の方もいらっしゃるだろう。
さて、このCDは彼女の得意なイギリス音楽ではなく、様々な国籍の作品を弾いているが、どれも手堅い演奏を繰り広げている。
技術、感情表現、様式感などが上手くバランスしているのである。それが英国人の趣味の良さというものなのであろうか。
肝心のStradivari と Guadagnini の弾き比べであるが、私の聴いた感じでは、強奏の際にややStradivariの音が詰まるというか伸びが無いような気がした。(当然好みもあるし、異論もあると思うが、是非、バルトークの1曲目とクライスラーの冒頭などで強奏部を聴き比べてみて欲しい。)
弱音の美しさなどではもちろんStradivariにも捨てがたいところも多いが、上記の理由で私はGuadagniniの方に軍配を上げる。
さて皆さまはどう判断されますか。
録音には定評あるBISレーベルであるがここでも良い仕事をしている。
適度にヴァイオリンに近接して明晰さを失わず、しかしながら美しい残響音も寸分漏らさず収録した大変優秀な録音が銘器の音を引き立てている。
録音も優れたディスクとして広くお薦めしたい。