ピエール・ローデ(ロード)24のカプリース(ebs 6007) オスカー・シュムスキー
演奏 オスカー・シュムスキー(Oscar Shumsky)
ヴァイオリンの名曲でカプリースといえば、まず、パガニーニの24のカプリースを 思い浮かべる方が
多いに違いない。しかし、ここではその有名なカプリースではなく、 ピエール・ローデ(ロード)が作曲した
24のカプリースをとりあげることとする。
ピエール・ローデ(1774~1830)というと、ヴァイオリンを相当習っていた人には、
「ああ、あれね」ということで、すぐお分かりいただけるのであるが、一般には 全くと言って良いほど知られてはいない人である。
ヴァイオリン練習曲の世界では、カイザー、クロイツェルの次に位置付けされる大御所的存在なのだが、そこまでたどり着けず、リタイアしてしまう人の何と多いことか。
(因みに、私もその一人である。)
このCDは世界初録音とのことだが、ある音大出身者(妻とも言う)にこのCDを聴かせたところ、「ローデてこんな曲だったっけ?」と首を傾げ、譜面を持ち出してきた。
それほどこの演奏は美しく、極めて音楽的である。
練習曲といえば、機械的で無味乾燥というイメージが強いのであるが、そう生徒に弾かせているのは、 かつて自分が練習曲で苦労しその延長線上でしか指導できない、
教師たちその人なのではないか? この演奏を聴くとそういう気がしてくる。
このCDの解説書によれば、オスカー・シュムスキーが使用している楽器は、A.ストラディヴァリ (Stradivari) 1715年製 “Rode” 。つまり作曲者ローデ自信が所有していた楽器なのである。
それが時を超え、再びシュムスキーの手によって、自作のカプリースを奏でる。
ヴァイオリンとは何とロマンに満ち満ちた楽器なのであろうか。
かつては五嶋龍が使用していた( NPO法人イエロー・エンジェルより貸与)
オスカー・シュムスキーは1917年フィラデルフィアの生まれ。8才のときに、ストコフスキー指揮 フィラデルフィア管弦楽団のソリストとしてデビュー。アウアー、ジンバリスト等の名教師に師事。
1938年トスカニーニ率いるNBC響に入団。プリムロース弦楽四重奏団の第一ヴァイオリンもつとめた。
その後はジュリアード音楽院、イエール大学等の教職に就いて、演奏家としての第一線からは退いていた。
ところが、1980年代初め、イギリスにデビューし、演奏活動を再開。レコーディングも開始し、一躍国際的に 注目されることとなった。
※ 筆者所有オスカー・シュムスキーの他のCD
バッハ | 無伴奏ソナタ&パルティータⅠ、Ⅱ | (日本クラウン CRCB-1003,4) |
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クライスラー | 名曲選集Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ | (日本クラウン CRCB-15,16,173,4) |
バッハ | ヴァイオリン協奏曲集 | (Nimbus NI 7031) |
モーツァルト | ヴァイオリン協奏曲 第4番、5番 | (Nimbus NI 5009) |
イザイ | 無伴奏ソナタ | (Nimbus NI 5039) |
ベートーヴェン | ヴァイオリン協奏曲 | (ASV CD QS 6080) |
モーツァルト | ヴァイオリンソナタ集(4枚組) | (ASV CDDCS 404) |
どの演奏も虚飾を排した、節度ある趣味の良いもので、彼のストラディヴァリウスの美音が楽しめる。
特にお薦めは、イザイの無伴奏、バッハの無伴奏。実に真摯でいて、かつ伸びやかな演奏である。