第9回です。
今回は弓と楽器の相性についてです。
【楽器と弓の相性とは】
「楽器と弓との相性」について言葉で表現するのは大変難しいのですが こんな話があります。
演奏家の間ではストラディヴァリウスにはトルテの弓が、 ガルネリ・デル・ジェスにはぺカットが良いと言い伝えられています。
これは、まんざら根拠の無いことではなく、 楽器の持ち味を余すことなく引き出す弓というものが 存在することを意味しているのだと思います。
いずれも素晴らしい楽器であり弓であるのにもかかわらず、 何故か逆の組み合わせではその良さを殺し合って しまい本来の実力を発揮できないのです。
ストラディヴァリウスには優美なトルテが、デルジェスには力強いぺカットが ベストパートナーなのです。
要はその楽器の特長を最大限まで伸ばしてやることが良い弓であり、 その状態が「相性が良い」ということなのです。
では、楽器の欠点を隠してくれる弓はどうかといいますと、一見、好都合のように 思えますが、私はそういうアプローチは止めた方が賢明だと思います。
組み合わせを考えるときには「欠点」「弱点」を矯正する方向で考えるのではなく、 長所をより伸ばす方向性で組み合わせを選ばれるべきだと思います。
出るところを色々と押え込まれてバランスを取った楽器と 出るところはそのまま伸ばされた楽器では、勢いが違います。
人間だって、いやいや不得意な分野に取り組むより、得意なことをどんどんやった方が より上達します。 何より、その方が生き生きして輝いて見えるのではないでしょうか。
次回は11月下旬ごろの更新予定です。