インテルメッツォの第16回です。
今回は前回の続き、 初心者の方はどのような楽器をもつのが良いかです。
「弘法筆を選ばず」ではないですが、名人はどんな楽器でも それなりの良い音を出してしまいます。 ところが、まだ熟練していない人は、今弾いている楽器の音以上の良い音 を作り出すことはなかなか困難です。
何故でしょうか。
それは、名人は、名器と毎日付き合うことで、名器の持つ響きのイメージが頭の中にしっかり焼き付けられているからなのです。 名器に毎日、良い音、響きというものを教えられているのです。
ですから、そういう楽器に、日々教育された名人は、 楽器が多少性能の悪いものに変わろうとも、 その楽器の性能を限界まで使い切って、頭の中にある「良い音」を 再現してしまうことができるのです。 それで、名人は楽器による音の差があまり出てこないのです。
似たようなことは貴方にも体験することが出来ます。 貴方が、今までそれほど良くない楽器を使っていたとして、 今回、貴方が良い楽器に買い替えたとします。 その良い楽器で、暫くの期間練習し、また何かのときに、 前使っていた楽器を弾いてみます。 すると、きっと 「この楽器こんなに良い音だったっけ?」 という感想を抱くに違いありません。 実際、以前より良い音がしているのです。
これは、良い楽器によって、貴方の頭の中の音のイメージが 良いものに置き換えられたからに他なりません。
以上のことより、たとえ初心者の方でも 最初から良い楽器を持つ必要性が証明されたのです。
初心者の方は、腕もないのに良い楽器を弾くのは恥ずかしいとか、 今の技術では良い楽器を弾いても差が出ないとおっしゃる方がいらっしゃいます。
確かに現時点では100%その楽器の実力を引き出すことはできないでしょうが、 上記のように、良い楽器に、毎日良い響きというものを教えてもらえる効果は大きいのです。
パソコンや家電のようにモデルチェンジが頻繁に起こるもの、流行のあるもの であれば、腕前やニーズに応じて買い替えられて、最新のものを買われるという考え方が合っていると思いますが、ヴァイオリンの場合は、 300年前から何も変わっていません。むしろ古いものが良いとさえ言われている のです。
ですから良いものを長く使われるのが、練習のためにも、楽器のためにも、 そして経済的にも良いと思います。
初心者用というキャッチコピーに惑わされて、安価なだけの楽器に手を出さずに、ご予算の許す限り、最初から、 良いものを手に入れられることがポイントです。
【まとめ】
初心者の方たちがどのような楽器を選ぶのが良いかまとめてみましょう。
1)外見からは、本格的材料を使用し、丁寧につくられている楽器。
きちんと作られた手工品ができれば望ましい。
2)楽器(道具)としての性能がしっかりしているもの
(開放弦の)響きの良い楽器 音量がある楽器 発音(音の立ち上がり)が良い楽器 弾き易い楽器
(ご注意)
部品の形や色、材質で楽器の良し悪しを判断したり、 ネックの太さで弾きやすさを決めたりする方がいますが、 これらの部分はあとから交換したり、調整したり出来るものです。
楽器の本質とは関係無いことが多いので、惑わされないようにしましょう。
次回からは初心者の方に限らず、楽器選びのときに陥りやすい罠についてお話ししたいと思います。
次の更新は3月初旬を予定しております。