インテルメッツォの第30回です。
製作家についての「「研究」について述べてきましたが、結論を言えば、弦楽器商になるつもりでもなければ、そんな勉強はあまり意味を成しません。 いや、弦楽器商になるためにだったとしても、それらの知識は、お客様に知ったかぶりをするため以外には役に立ちません。
以前にお話いたしましたように、弦楽器商の仕事とは、お客様の好みを勘案し適切な楽器をご案内することが最終的な目標だと思います。 そのために、楽器のおおよその年代、製作地、つくり・音の良し悪しがわかり、またそれに基づく価格の妥当性を判断する能力が問われるのです。もちろん知識も必要ですが、むしろ感性が問われるのではないかと思います。
ソムリエと同様、銘柄の当てっこだけでは、何ら意味を成さないのです。(何せ楽器の真贋には模範解答集がないのですから・・・)
また、知識があるとかえって判断を誤ることもお話しました。
自分では良い楽器だと思っても、あまり有名製作者でないからという理由だけで購入に踏み切れない方がいらっしゃいます。逆に、名前だけで(値打ちがあるはずだと考え)あまり音が気に入っていないのにもかかわらず、買ってしまう方もいらっしゃいます。有名なディラーの鑑定書が付いているから安心というのもそういう方たちでしょうか。
確かに買い手の知識が無いと馬鹿にするというような楽器商もいるので、知識をつけて武装したいというお気持ちは良くわかります。でも、生半可な知識をふりまわすと、かえって足元をすくわれかねません。
ですから、知らないことは堂々とお聞きになることです。
「有名な製作者が作った。」「どこそこの鑑定書が付いている。」ではなく、楽器そのものが重要なのです。それを忘れてはなりません。目の前の楽器とだけ会話をするべきです。 楽器は嘘をつきません。真実はそこにのみあるのです。
知識がないことをばかにするような人とは、先ず付き合わない方が賢明だと私は思います。 いくら有名な製作者の楽器を扱っていようといまいと、それ以前にその人の「人間性」「品格」が 問われるべきだと思うのです。
次回は楽器についての「研究」、すわなち製作、楽器の調整などの研究で陥りやすい罠について 述べます。
次の更新は1月初旬を予定しております。 どうぞご期待ください。