バイオリン(ヴァイオリン)販売・専門店・
弦楽器サラサーテ・東京(渋谷)から25分

完全予約制 10:00〜19:00 不定休

ヴァイオリン選びで陥りやすい罠について 「相談」することの問題点

インテルメッツォの第18回です。

今回は前回に引き続き、 よくある3つの行為(相談、研究、比較)の誤り について、私の独断と偏見を展開していきたいと思います。

先ずは「相談」の問題点についてからお話ししていきたいと思います。

相談について、 「相談の法則」(大原敬子著 扶桑社刊)という本には、こう書いてあります。

「相談-。私たちは、何気なくこの言葉を使います。 しかし、この「相談」という言葉には、人生のすべてが 変わってしまうほどの重さが含まれているのです。」

ここで述べられている「人生」は「楽器」という言葉にも 置き換えることができるのではないでしょうか。

プロの弦楽器奏者はもちろんのこと、生涯の趣味として 弦楽器を選択したアマチュアの方々にも、 人生=音楽、音楽=楽器、人生=楽器という公式が成り立つからです。

相談ひとつで選ぶ楽器が変わり、人生が変わると言っても過言ではありません。

そんな大事な「相談」なのですが、 相談が上手くいくためのポイントは、ずばり

1)相談内容の整理、吟味

2)相談相手の選択

に集約されます。

先の本でも、人に相談する前に先ず自分で問題を整理することが肝要と説いています。

「自分自身のなかで問題がきちんと整理されていないと、感情が渦巻くばかりで、具体的な解決に向かうことは できません。」(「相談の法則」大原敬子著 扶桑社刊)

普通、物事を相談する場合、ある程度はその物事について自分で調べたり、自分なりの考えを持って相談に臨むことが多いと思います。

相談に失敗する典型的な例は、相談すべき内容を整理せずに 漠然とした質問を投げかけてしまうことです。

例えば 「ドイツ車はどうですか?」等の質問がこれに該当するでしょう。

そうではなく、 「フォルクスワーゲンのパサートの1.8L のハンドリングはどんな感じですか?」 と聞けば、感覚的な問題ながらも具体性が増します。それによって、相談される方は随分と答えやすくなるものです。

つまり、 曖昧なものは整理して具体的に質問する。 どうしても整理できない曖昧なものは、 かえって混乱するだけなので相談しない。ことが重要と言えるでしょう。

これを弦楽器の世界に置き換えてみると、 「モダンイタリーは良いですか?」 「ドイツの楽器ってどうなんですか?」 「この楽器の音色はどうでしょうか?」 というような質問が漠然とした質問に当てはまります。
こういった漠然とした質問では質の良い回答は得られません。

問題をきちんと整理する。 これは日常の問題に当てはまっても、弦楽器の世界にあてはめるのは困難です。

なぜなら、音は個人の趣味の問題、言わば好き嫌いの問題です。考えを整理して言葉で表現することが極めて難しいのです。音に関する趣味の問題は、もともと曖昧ではっきりとしないもの なのです。これは決して言葉で整理されない性質のものなのです。

これを無理に整理して具体化すると 「私はグリュミオーのような音のヴァイオリンを探している。」 というような質問になってしまいます。 こう言われたところで、当人はグリュミオーではないわけですから、 これではいくら相談内容が具体的でも楽器選びの結論は出ません。

ですから、音について相談をされる場合は、 音量の大小、反応(音の立ち上がり)の良し悪し、 4弦のバランス、重音の響き等々、ある程度客観的な要素を基に質問、相談されるのがよろしいでしょう。

その質問の例としては 「この楽器の音量は弾いている自分としてはあるように思うのですが、聴いていて音量はある方ですか?」 等が考えられます。

1)相談内容の整理、吟味 の結論 は・・・・こうです。

弦楽器選びの場合、一般の相談事と異なり、 どんなに突き詰めても、整理されない曖昧な部分が残ってしまうことを認識して下さい。
その曖昧な部分は自分の趣味によるところが大きいので、人に聞いても解決できません。自分で決定するところが大なのです。
どうしても整理できない曖昧なものは、 かえって混乱を来すだけなので、無理に具体化したりせず、 相談しない方が賢明です。 ただし、相手にも判りやすい客観的な指標が見い出されれば、それによる相談は可です。

次回は「相談相手」について述べたいと思います。 次の更新は月末ごろを予定しております。 ご期待ください。