インテルメッツォの第27回です。
さて、今回は本題に戻り、シリーズでお話しておりますよくある3つの行為 (相談、研究、比較)の誤りの中から、「研究」の誤りについてです。
ヴァイオリンについて研究することと言えば、大きく2つに分かれると思います。
すなわち、
1)製作家について
・製作家名、製作家の系統
・鑑定 楽器の評価、価格 楽器の真贋
2)楽器本体について
・製作について
・楽器の調整など です。
1)の製作家について研究するというきっかけは、もちろん知的好奇心からということはあるでしょう。
しかしどちらかというと、有名弦楽器専門店に行ったときに、色々な製作家名をまくしたてられ、何のことかチンプンカンプンだったとか、製作者の名前を知らなくて店主に何だか馬鹿にされたようで面白くなかったというような体験から来ていることが多いのではないでしょうか。
また、モダンやオールドイタリアンということになると、大変高価な買い物となるので、自分で製作家名などを調べておかないと、変なものを掴まされて大変だとお考えの方もいらっしゃることでしょう。
もちろん良い楽器を見ておく、名器について調べるということは、出来の悪い楽器を判別しそれを退けるために大いに役立つことなので、それ自体は非常に有意義なことです。
しかし、色々な製作者名を覚えたり、その価格などを調べ出すと、かえってそれが楽器選びの足を引っ張る結果となってしまうことも少なくありませんから非常な注意が必要です。 生半可な知識ほど危ないものはないのです。
実はヴァイオリンを選ぶときの最大の敵は「先入観」です。
知識は、判断を助けてくれることもあるのですが、多くの場合は 先入観を増大させる働きしかしてくれません。 知識は先入観を増大させ、健全な感覚=直感を鈍らせることになる場合もあるのです。
そもそも楽器のラベルや鑑定書は必ずしも100%信用できるものではありません。
もともと製作者名に関する知識が乏しければ、楽器そのものだけで判断する以外に手立てがありませんが、製作者名について、なまじ「お勉強」してしまうと 「この製作家がこの値段?これはきっと掘り出し物に違いない!」とぬか喜びしたり、 取るに足り無い楽器なのに、ラベルを見て「あの有名な製作家のもの!」と早合点してしまったりすることになります。その結果は無残なことに・・・
逆に、真に状態もつくりもすばらしいヴァイオリンが目の前にあっても、自分が名前を知らないというだけであったり、マイナーな製作家だという理由でスルーしてしまうかもしれません。これは大変もったいないことですね。
「ラベルや鑑定書はあてにはならない」と気づくことができた方は、それじゃあ、自分自身がしっかりして 「楽器の真贋」 を見分けられるようにならなくてはならないと思うのですが・・・・・・
この続きはまた次回にお話しましょう。
次の更新は月末を予定しております。 どうぞご期待ください。